『ハーメルンの記憶』役別雑感 4


『ハーメルンの記憶』は、
かなりクオリティの高い映像技術を駆使しています。

オープニングで赤ちゃんの話をしてて、
そのあとタイトル文字が出るときに、
スクリーンにちらちらっと光が映ったのです。
動きがまるで泳いでいるように不規則で、
どこか生物的な感じだったので、
受精卵? 試験管ベビー? と、想像を巡らせていたら、
なんと、着陸するヘリコプターのライトだったという。
生物と真逆の文明の利器じゃないかい!
なんかそのギャップが、私の中で印象深くてですね。

意図的に生物と見間違うような演出としてたのなら
脚本演出の細川さんはとんでもない技量の人だと思うし、
ただの私の見間違いなら、まいくろがアホってことで。


さて今回は、
「ハーメルン計画」に欠かせない役割を担ってた方々。

田宮博士と、中森葉子。



↓ ネタバレ注意!


>田宮宗介@一明一人さん
医学博士。
人間の脳に備わった、
「古くなった部分を自浄する機能」を高めて、
脳内疾患を治療する技術を研究しています。

ただ、患部が患部なだけに臨床段階に進めないのです。
脳ですからね。
倫理的にもちょっとね。
臨床ってか人体実験? って周りからも言われますしね。
失敗したら、患者はほぼ確実に死に至りますしね。
そんなわけで、研究は頓挫。

ある日、田宮博士は
「エスターハス症候群の治療法を見つけてほしい」と
祇園夫婦から依頼されます。
治療法が確立すれば、人類すべてへの救いになると。
脳の、症候群の原因になる部分を突き止めて、
彼の技術を使ってで洗い流せばいいのです。
そうすれば、健康な脳の出来上がり。

研究を押し進めるには臨床が必要。
治療法を探すため、脳の仕組みをもっと知るため、
田宮博士は研究するための「脳」を欲しがります。
…それも、多数。

選ばれたのは、
戦災孤児救済センターに受け入れられた孤児たち。
それが、ハーメルン計画です。

この計画を祇園邦彦氏に持ちかけるときの
田宮博士の顔がね。普通で怖かったです。
だって、恐ろしいことを
普通のことのように喋ってるんですよ?
そりゃあ説得するわけだし多少猫撫で系になりますが、
子供の脳をいじくるって事に、
恐怖とか良心の呵責とかがないみたいでね。
むしろキレッキレの笑顔くらい見せてくれれば
「マッドサイエンティスト」と言えたのに…ひぃい。
狂っているというよりか、
欠落してるってほうがしっくりきます。
「返事を待っているのは私の方ですよ」と、
邦彦氏をゆさぶるところとか
客席で背筋がぞわぞわしてました…

もう一人のエスターハス症候群患者である、
みずきちゃんの両親、成田夫妻と話をするシーンも、
優しい言葉遣いをして相手をしていますけど、
心はどこか遠くにあるというか。
母親の幸子さんの訴えを聞いているようだけど、
彼女の悲しみとか必死さとか、
彼の心には全く響いてないんだろうなぁというのがね。
陶酔したしゃべり方が独特。
どこぞで「怪演」と称されていたのもわかる気がします。


さて、たくさんの孤児というモルモットをゲットし、
高度脳科学研究センターで研究に励む田宮博士。
しかし「治療すべき患部が見あたらない」
という壁にぶち当たり、研究は二度目の頓挫。
急かしに来た祇園邦彦氏に、
「(研究のため)かの子ちゃんを解剖させて」と、
とんでもない発言をして、殴られてしまいます。
本末転倒。そりゃ激昂もしますな。
邦彦氏も「ハーメルン計画」は世界中の子供たちの為と
自分に言い聞かせてましたが、ぶっ飛んでしまいます。

そんな彼に田宮博士が
「(世界のためとか)まるで英雄だった…」と言うのがね。
田宮博士は、どこまでも自分のために動いている。
彼の言葉は、
倫理観と本音の間でせめぎ合う、邦彦氏の心をえぐります。

たくさんの子供を犠牲にしてきたんだから
原因究明できるはず…と邦彦氏は思っていますが、
これはマンガやゲームじゃないからね。
犠牲が大きければ、
必ず結果が得られるとは限らないのです。
そういうのが現実のツラいところ。


田宮博士については、
「研究が二度目の頓挫の後、自殺した」
という記録が残っています。
ですが、死ぬ前の田宮博士の研究は、
脳のコピーという展開を見せていました。
個人の脳の電気信号パターン(ブレインマップ)を、
脳洗浄機能を利用して他人の脳に移し替えるという理論。
それが実証されたかどうかは、
施設の爆破事故によって記録が消失し、確認不能。


実は、彼が人生の大半を費やしたこの研究の記録。
ハーメルン計画の共犯者である成田幹雄によって、
130人の孤児たちのブレインマップとともに
とあるメルマガ業者の電子端末の奥深くに隠されています。
そこは誰も触れられないように、
ネットワークから切り離された場所。

そのアーカイブデータは、
「マネス」のように人格を与えられ、
自分で自分を守るようなプログラミングをされています。
アーカイブデータのある端末にダイブした雁屋。
その前に現れたアーカイブデータ人格の姿は、
田宮博士の外見でした。
ただ、外見は同じでも少し性格は違っていて、
用心深いけれど社交性は人並みにあるという。
田宮博士そのもの、ってわけじゃないみたいですね。
この辺の演じ分けも絶妙です。
雁屋のマネスであるネジメさんを拘束し、
ネジメさんの口を借りて話すときの演出、かっこいい。

彼はアーカイブデータという「記録」でありますが、
孤児たちのブレインマップを保持しているため、
「ハーメルンの『記憶』」と名乗ります。
孤児たちの記憶の一部を雁屋に見せますが、
その時の雁屋の、うめくような反応も印象に残りますね。
子供とはいえ130人分という超大容量ですし、
しかも、どれもこれもまっすぐな「愛」の記憶ですから。
おそらく脳内パンク寸前の雁屋の目は、
涙まみれだったんじゃないかなぁ。

そうそう、アーカイブの彼があの姿になったのって、
「田宮博士は消されたのかも」と判断した成田が、
田宮博士が生きていた証として彼の姿に設定したのかしら。
それとも、研究データに残った
田宮博士の怨念…いや、魂がそうさせたのかな。


こちらの役者さん、イチメイイチトさんと読むのですね。
『ごんべい』で
アンサンブルキャストとして出演されてて、
字面が独特だったので覚えています。
ごんべいが龍あにぃに
「俺好みの女に化けてみろ」って言われた時の姿として
出てきたのが記憶に新しい。
あの時、顔見るまで男の人だって気づきませんでした(笑

今回は完全に男性の役なので、
舞台上ではそんな感じはしないのですがね。
カーテンコールの立ち姿と、
稽古場DVDの素の時が…!!
下手な女より色香(色気ではない)があるんですけど(゚゚;



>中森葉子@fーco(ふーこ)さん
ショッピングモール白昼狙撃事件の被害者。
移民孤児として日本に入国し、
戦災孤児救済センターで教育を受けます。
その後センターで、養護教諭的な立場に従事。
かつての自分と同じような孤児たちの面倒を見ていました。
その際に「アルバイト」として、
指示された孤児たちを
秘密裏にセンター外に連れだす手引きをしていました。
彼女は、それと知らずに「ハーメルン計画」に荷担してます。

子供たちがどこに行くか、彼女は知りません。
でも連れだした子が帰ってこないことは知っています。
「チョーク」と呼ばれるドラッグに手を出し、
自堕落で荒れた生活を送っている彼女。
生前の彼女と最後に会話した成田幹雄は、
彼女の心に巣くった後悔と自責の念を見抜いていました。
「薬はやめた方がいい」と言われ、
残された彼女の、一瞬の表情がね…なんか切ない。

そして次の瞬間、彼女は狙撃されてしまい、
命を落としてしまいます。

サイレンサー付きの銃で撃たれたので、
銃声は周りに聞こえません。
突っ伏してしばらくして、周りの客が異変に気づきます。
最初は「狙撃」とかいう衝撃的な状況ばかり目に入りますが、
彼女は誰にも気づかれずに死ぬという、
寂しい最期なんですね。

中森葉子という戸籍名は、日本人のようですが、
これはおそらく、後から付けられた名前。
親からもらった名前がどんなものだったかは謎。
ネタバレパンフレットにも、
アンサンブルキャスト以外の「人間」で唯一、
星座と血液型が記載されておりません。
そこがまた、彼女の孤独を増す要素になっていたりして。

死語、雁屋によって創られた彼女のセリフ。
「愛されたくて覚えたの。
 『こんにちは』『ありがとう』…」ってのが、
ちょっと色々な意味で心にグサグサ来ました。

バンタムブログでよくお稽古の様子をUPしてくれてて、
そこの文体からキャピッとした人を想像していたのです。
今回演じた役柄がそれとあまりにも違いすぎて、
配布リーフレットの写真を見て「おぉう」となりました。
やっぱり役者って面白いですねぇ。
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(画像は7年前に描いたものです)