『ハーメルンの記憶』役別雑感 2



パンフレットの登場人物紹介に、
星座と血液型が書いてあるのが気になります。
役者さん自身のじゃなくて、
その登場人物の星座と血液型のようです。
(少なくとも大阪王子の役に記載されてる星座・血液型は、
 王子本人のデータと違う)

バンタムクラスステージさん、
毎回こんな感じで登場人物のステータスを
細かく設定している劇団さんなのでしょうか。
ちょっと面白いですねぇ。


さて引き続き『ハーメルンの記憶』役別雑感。

祇園夫妻。



↓ ネタバレ注意!



この『ハーメルンの記憶』の世界には、
「エスターハス症候群」という小児病が存在しています。
発達障害の一種で、原因は不明。

エスターハス症候群の子供はみんな無表情で、
外部からの接触に何の反応も示しません。
話しかけても反応なし、
だから耳が聞こえているのかもわからない。
もちろん、子供達が自分から喋ることもありません。
症候群の子供達は、なにも「発信」してくれません。

成長に伴ってちゃんと指導すれば、
多少の日常的行動(排泄や入浴など)は
一人でできるようになるらしいのですが…会話は無理。
話したいけど身体が動かないのか、
それとも話そうとする意志も存在しないのか。
表情のない彼らから、それを読みとることすらできません。


その「エスターハス症候群」の子供を持つ夫婦が、
『ハーメルンの記憶』のストーリーにおいて
とても重要な役割を果たしています。



>祇園邦彦@徳永健治さん
>祇園美智子@山本香織さん


そんなエスターハス症候群の患者「祇園かの子」の両親。

父親の邦彦氏は、
巨大医療法人祇園グループの次男坊ですが、
経営の才能はあまりないらしく…
お見合いで妻の美智子さんと結婚したそうです。

舞台上の姿を観てた感じでは、上記のように
そこまでダメダメな男ってイメージはありませんでしたね。
たぶん私の、彼に対する印象が
「祇園グループの息子」とか「参院議員」とかじゃなく
「かの子のパパ」要素で占められていたからだと思います。
かなりいいお父さんだったと思うのですよね~。
あ、今思うと、
競争社会を生きる男性としては不振だけど、
父親としては満点でいたい…! っていう人だったのかしら。


母親、美智子さん。
兵庫県の県会議員を9期つとめましたが、
今年(2043年)に辞任して
兵庫県の知事選挙に出馬を表明しました。
10年前に設立した「戦災孤児救済センター」は、
彼女の悲願。

夫婦に愛はあるようですが、
奥さんの方が尻にしいてる感じ。
自分の子供が居るのに、
仕事や孤児の保護のため家を空けがちな美智子さん。
そんな妻を、邦彦氏はあまり理解できないようです。


美智子さんは見た感じ強い女性ですが、
初期の段階から、彼女を取り巻く空気に
「焦燥感」「苛立ち」が見えるんですね。
話しかけても反応を見せない自分の娘。
年とともに娘の体は大きくなるし、
自分も同じように老いていく。
いつか彼女をこの世界に一人遺していくことになる。

前だけを見て生きてきた故か、
人に甘えることができない美智子さん。
誰にも(夫にすら!)弱音をこぼすことができないし、
苛立ちを他人にぶつける行為も、
無意味なことだと頭では知っているんですね。

でもその焦りと苛立ちが押さえきれなくて、
「この子(かの子)には何も聞こえてないのよ」などと、
娘の目の前で残酷なことを言ってしまったり。
そして、それを嫌う邦彦氏とギスギスしてしまう。
娘が普通の娘だったなら…という思いは、増すばかり。
この感じ、演技と思えないほどでした。
彼女がもっと早く弱みを言えれば、
展開は全く変わっていたんだろうなー。



エスターハス症候群の治療法確立のため、
戦災孤児救済センターの孤児を実験台にするという、
「ハーメルン計画」。
祇園夫妻はセンター設立から数年の間、
合計130人の孤児を密かに実験施設に引き渡し
結果的に廃人に追い込むことになります。

「ハーメルン計画」の話が出たとき、
邦彦氏は返答しあぐねていました。
でも美智子さんは躊躇なくその計画を動かすことを決断。
孤児の救済は自分の目標であったけれど、
自分の娘を治すためなら、と犠牲にしてしまう。
彼女のやったことは狂気なのかもしれませんが、
なんだろう、100%責めることができないんですよね。


私は子供をもってないのでよくわからない部分もあるし、
親子愛についての観念が歪んでるってのもあるので、
まぁ…アレなんですが。

美智子さんにとって娘は
「自分のおなかを痛めて産んだ子」だから
この子が最優先! と決断ができたのかなぁと。

父親にとって子供はそりゃ大事なのだけど
「愛する妻が産んだ子」という繋がりなわけで。
つまり世の子供すべてが、各々の母親の最優先ってことです。
だから「他人の子供を実験台にする」という決断をするのに
父親である邦彦さんは躊躇したのかなーって思いました。
間接的に、自分が犯罪者になるってこともあるわけですし。



講演会でトラブルが起きたとき
ハーメルン計画と祇園夫婦の関係を怪しまれて、
取り調べのようなものを受けることになります。
しらを切っていた美智子さんですが、
「罰を受ける」という言葉に揺さぶられ、
邦彦氏に「私に触っていて」と震えだします。
強い女が初めて崩れた瞬間。
これで真実は明らかになるのか!? と思わされます。
ですが、そこで陥落しないのが「母親」だったりして。

彼女は「ハーメルン計画」に関連してもう一つ、
夫にもすべてを知らせていない動きをとっているのです。
「娘のためなら、国だって売る」と
銃を構える美智子さんに、迷いはありませんでした


さて、物語のクライマックスで、
「かの子の言葉を発することができる少年」が、
かの子と、祇園夫婦の前に現れます。
そこに銃を持った人間達が飛び込んできて、
すわ銃撃戦か!? という状況に。

とっさに父親の邦彦氏は、かの子の盾になり、
美智子さんは少年をかばうんですよね。

なんかね、ここのシーンがすごく印象的でした。
話をしなくても、反応がなくても、
邦彦氏は「かの子がこの世に居るだけでいい」んだなぁって。
美智子さんは「かの子の心と触れあいたい」んだなぁって。
それはどっちも愛情だし、
むしろそういう種類の違う愛情を持った人同士が
協力して子供を守るから、家族が成立するんだと思うのです。

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