オパ池の響 『さようなら』

観劇ラッシュ目前に、いそいそとアウトプット。
まいくろです。


オパンポン創造社×池シタアツ子の美カモト響
『さようなら』

3月頭、大阪に遠征して観た作品。

オパンポン創造社 と 池シタアツ子の美カモト響という
二つの団体の合同公演ですが、
どちらも「オパンポン創造社」主宰の野村有志さんが脚本・演出(笑

この作品、11年前に野村さんが自団体で発表したものだそうです。

物語の舞台は、淡路島。従業員数名のネジ工場。
事務系の仕事をほぼ一手に務めている末田という女性が、
社長が脱税して貯めこんでいるお金を盗んで、
この「繰り返し」で構成された閉塞感のある人生を変えようとし、
それによって周りの人々の「繰り返し」人生も変化し、動いていく話。



↓ 以下、ネタバレ感想と自ツイートまとめ 




11年前っていうと、昔のようですけど
ちょっと田舎に行けば現状リアルタイムもこんな感じだよなーって。

登場人物が車の運転する演技の、
ハンドルの角度や、ややレトロな感じのするウィンカーのリズムに
「あぁ、サンバー(車種)みたいな車なんだろうな」などと
経験からの想像をかきたてられました。

現状を動かそうとするのは末田って事務員の女性なんですが、
主な視点としては甘んじて現状を受け入れている「柴田」で観てました。

途中まではほんと観ててつらくなるほどに
身動きの取れない現状でした。
横暴な先輩社員に「今日は早く帰るから!」と毎日のように誘われて、
でも毎日朝帰りで。
スナックで先輩が歌う曲は得意な、いつものあの曲ばかり。
飽き飽きしてるけど、先輩の機嫌損ねるのもめんどうなので
ノリノリなふりをして、隠れてそっと携帯をいじってます。

全力でノッてるスナックのママの温かさが、
景色全体を寒々しくさせるという不思議な感触は
ママのこれも「仕事だから」なんだよなぁ
っていうのが、私の脳裏にあったからなんでしょう。

もちろん柴田くん、この毎日に不満はあります。
彼の意見や感情がブワッと立ち上る瞬間もあります。
ただ、彼はそれを押し込めて日々を送ります。

現状を変える努力をしたとして、プラスになる保証はない。
マイナスに転ぶくらいなら、この現状をプラマイゼロとして続ける方が楽。
そんな感じに、理不尽への憤りもチャンスも噛みつぶして生きる青年でした。

巻き込まれるように始まり、急転する彼の日常。
(柴田くんは「巻き込まれないように固辞する」努力もしなかったので
 すべてを他人のせいと言い切ることはできないんですよね)
今まで押し込めてきた感情を吐露する際に、
あふれる過ぎて言葉がおっつかないところとか、リアルでしたね…

すべて失って、言わなくてもいい真実はそっと飲み込んで、
以前とはまたちょっと違うけど
プラマイゼロの「日常」を送り始めた柴田くんのもとに現れた
「人間変わろうとしたら、案外ガラッと変われるもんだ」の象徴。

あの瞬間、今まで周りをかこっていた壁の一部が音を立てて崩れ光がさし、
身体に絡みつく糸がブチブチッとちぎれるんです。
本当に面白かった。
こういう瞬間が好きで、野村さんの作品を観に行ってるんだなぁ。


序盤の「繰り返す日常」がどんどん省略されて
役者さんが大忙し
(でもストーリー上、無機質に淡々とこなさなくちゃならない)
…という演出も、面白かったです。

カーテンコールのあとにも「それ」があるんですけど、
最後に「柴田が扉を出て、ドアを閉める」んですね。
閉塞された日常に、さようなら。
それも自分の意志で。
あそこまでが作品なんだなぁと思いました。

なんなら、劇場を出たあとの空模様までが演出だった
と、言っちゃってもいいくらい。

会場が in→dependent theatre 1st という、
ちょっと見つけづらい入口の、外から見たら倉庫っぽい感じ、
世間的には注目されないけど、はいつくばっても、
確かに生きてるっていうこの作品とあってるなぁって思いました。
(ロビー・物販場所にあたる2階とか、
 ちょうど作中に出てくる工場の事務所みたいなんですよね)



-----以下、当時の自ツイートまとめ(※ は追記)-----

オパンポン創造社×池シタアツ子の美カモト響『さようなら』
上演時間80分でスゴいドラマ観れるみたい…好評で楽しみ! 
明日観るんだぁヾ(*´∀`*)ノ

『さようなら』今回の公演Tシャツ(黒地のほうは特に)
絵柄の密度がスゴいので写真だとリボン細工がついてるみたいに見える。
触るとふわふわしそう
(※ 野村さんが時折描いてツイッターに上UPする絵の
 描き込みっぷりと小さな悲喜劇の密集感と全体像のバランスすごい好き)

オパンポン創造社×池シタアツ子の美カモト響『さようなら』independent1st(恵美須町)
あぁあ。ツラい。締め付けられる話。
役者が皆うまいから、世界がどんどん狭まっていくのが感じられちゃって。
演出としての小気味良さがスゴい効果になってる。
しかもこれのあとチラシ見るとさぁ…
(※ 「日常」のように、チラシの写真がループしているんですね)

『さようなら』は11年前の脚本なんだって。
社会の仕組みって完成されちゃってて、
知ってるけど知らない誰かの日常、ちょっと置き換えたら私の日常。
知らない人は一生知らずにいるのかも…っていうひずみ。
ラストシーンの奥に別の光を感じてもいいよね。
未来を知った2回目が観れるのがある意味救い。
(※ 最後に来たのがチェン→末田は新天地でしっかり生きてる)

殿村さんの言葉を野村さんの立場から聞いちゃって、
野村さんの役がどう感じてるかは別として、
聞いててむしょうに泣けちゃって。
笑える話じゃないのかもしれないけど、
感情を引き出してくる生々しくも楽しい芝居だった。
ううん、なんか言葉にすると陳腐だな…
(※ 子どもは意味を考えないから雨に単純に喜び、
 大人は雨の降る意味を考えてしまうから
 その後の交通規制等を気にして憂う…みたいなくだり)

「幸せ」って希望が見える瞬間なのかな。
ドアの開き始め、光が差し込んでくる時くらいの。
閉じてるときは幸せってよりドキドキだし、
開ききっちゃうと向こう側が見えて
それはそれでいいのかもしれないけど選択肢が出揃ってしまう、というか。
「いくつもの可能性がある、いわば自由!」なのが良いのかも

2回目になるとムカツクところが愛らしく(哀らしく)なって、
苦しいところが切なくなった。
「マイナスになるくらいならゼロのほうが」は
AT(※アフタートーク)の言葉だけど、作中の彼もそんな感じ。
多少期待してたけど打ち砕かれて顔にも出せない彼(※宮崎)も切ない。

「みんな気づかないし」って嘆いてた彼女の「変わろうとした努力」ね。
1回目観劇はひとごとで聞いてたんだけど、ループ2日目!
 「あ! ほんとだ!」ってなった。なんでもなくなかった!
(※ 末田さん、一日だけ眼鏡やめてコンタクトにしてた…初見気づけなかった)

アフタートークゲストの大王こと後藤氏も
「面白かった」「映画みたいだった」「映画になればいいのに」って絶賛してた。わかる。
あの配置(アクトエリア分断)は狙ってやってたのかと思ったんだけど
野村さん本人は「昔は舞台の使い方わかってなかった」って。
だとしたら本能で効果的にしてたってことじゃん、それスゴイ。


そうそう、今年1月の「クジカンキカク」の際に
脱ぐ気はなかったけど脱ぐことになった野村さんについて、
細川さん(だったよな…)が
「彼は脱ぐと決めてる時はちゃんと身体しぼってくるんですよ」と言ってたけどホントだよ。
今日のオパンポンスーツな野村さん、
キレキレの腰&モモだった。#堂々と見た

ちゃんと観たから言える。
迷ってるなら、オパミカは絶対観に行ったほうがいいと思いますです。
(実際の略称は、なんだろう)

そういえば『さようなら』アフタートークで美香本さんの年齢の話になって、
ご本人ツイートしていいよって仰ってたけど
思ってた以上だったのでちょっとビックリした。
四半世紀芝居してるとは当パンに書いてあったけどももっと若いかと。
そして野村さんは年齢:謎で活動してるので私も真似しようと思う



-----以下、ふせったー追記機能で書いた長文-----

オパンポン創造社×池シタアツ子の美カモト響『さようなら』観終えて、
東京に戻る新幹線内でポチポチと感想。(ネタバレあり)

残るは月曜の15時と18時の2公演。
independent1st(大阪・恵美須町駅徒歩1分)にて。

前半のまるでループしているような
「かわりばえのない日常」を描く演出が、
まず面白かったです。
少しずつショートカットされていって
最終的にはコメディチック早回し。
バタバタぐるぐるのみんなが見てて楽しいのもあるし、
繰り返しの毎日で心が少しずつ死んでいく…みたいな
みんなの表情の無い感じにゾクッとしたり。

チラシのデザインも、ループしてるんですね。
そういうのすごく面白いなぁって。

スナックで宮崎さんが歌う曲も、
時代、とか、ただかっこいいからだけじゃない。
(そして川添さんがとてもウマイ…生歌よね?)

宮崎さん。
井の中の蛙っていうか、
とにかく威圧して
「上下関係」でしか人間関係を構築できない種類の人。
どこにでもいるよね…
1回目観劇では、すごく苦手でした。
で、2回目になると彼の結末を知ってるから、
すこしこちらの見方も変わるわけで。
社長の家に行ったとき、
ドアが開くまで「話を聞いてくれるかもしれない」的な気持ちがあったんじゃなかろうか。
そしたら、話の流れで彼の態度は
軟化(少なくとも社長の前でだけは)したのかも。
でも社長はあんな態度でドアを開けた。
社長側からしたら無理もないんですけどね。
なんかあの瞬間、
宮崎さんの絶望っていうか
がっかりというか
「(自業自得だけど)あぁやっぱりそうなのか」
みたいな空気になった気がしました。
そこ、なんか、すごく悲しくなりました。

その前の、スナックのママとのやりとりもね…
ママのすーっと冷めてくところ。
あの眼。おそろしかったです。
スナックのママやってた彼女(トミコさんだっけ)、
いままでいろんな経験してきたんだろうなっていう雰囲気が
仕事に徹してる感じから出てて、
聞こえないフリや空気読めないフリが
徹底しててうまいなぁ…って思いました。

彼女には、宮崎さんも
本当のことを言おうとしてたんですよね。
言えなかったけど。
一線越えて、女としてすがりつく彼女だからこそ
あの眼が怖かったし。つらかった。

美香本響さんは
序盤でタクシーの運転手役もしてたけど…
あのタクシーも空飛ぶのかな(←別作品です)

ちなみに、その後宮崎さんは別の相手に
「頭下げるわ、頼む」と言うのですが
頭全然下がってない(笑)
まぁその言葉が出てくるだけ軟化したってことですよね。

盗んだお金で変わろうとする末田さん。
カバンをずっとだきかかえてる姿がいじらしい。
彼女の「この島で変わろうとした努力」を
私もスルーしてました。
それに気づかされた2回目観劇、
ラジオ体操してる彼女を見て
気づけなかったことが
申し訳なくなって涙がにじみました。
謝ってすむことじゃないけど。

観劇だから2回目観れたけど、
末田さんはあの後二度と「それ」では出社しなかったんだろうなと思うと…

泡となって消えた未来を思い
子供のように泣く彼女。
大人になると勝手に
「感情を出すのは大人げない」みたいな
鎖を自分にかけちゃうんですよね。

ラストシーンがアレだったことで、
彼女については、
苦労はあるかもしれないけど
新しい日々を送っているのだろうと思えました。

彼女が組んだ中国人、チェン。
アフタートークでゲストの大王から
「彼は日本人なの?」と疑われたほど
上手かったです。
沸点がよくわからないところも
名前を呼ばれると脊髄反射で反応するところも、
まるで彫刻刀で削ったかのように「にっか」と笑う顔もかわいい。
でもちょっとうざいかも。
…うん、うざかわいいだな。

彼は作中で社長が言うところの「こども」なのだと思いました。
彼は逃げたんじゃなくて
「そうしたらきっと楽しい、なごむ」
と思ったがゆえ行動だったのでしょうね。
相場はわかりせんがアレでほとんど消えたろうな…
2回目は、飲み会連れてってくださいシーンでの
彼の顔とあのシーンの彼の顔がダブって見えました(笑)
黙ってろって言われて黙ってるの大変よね(笑)


「動かなければなにも変わらない」とか
「大人は意味を考えてしまうから」とか
名言メーカーの社長。
普段はガチス○ベのハ○なおじさんですが、
だからこそ二人っきりで喋ってるとき等の
あの説得力、年の功、ギャップなどがすごいです。
宮崎のやんちゃな発言を聞き流せたのも、
かつて彼には「余裕」があったから。
余裕が無いとわかってしまってからの
社長の表情や態度一つ一つがヒリヒリします。


すべてを押し込めて「日常」を生きていた柴田くん。
不満や苛立ちはあれど、
発散してもなにも変わらないのはわかっているので押し込める、押し潰す。
ここがゼロ地点だと自分に言い聞かせる。
足の動きや返答までの一瞬の間に、
彼の本心が見えました。

彼と宮崎のケンカシーン「ぐるぐる」は 笑い場でもあるけど、
出口が見えない毎日の暗示のようにも見えたし、
作中のオパンポンスーツでのダンスも踊ってるときは
最初は「オパンポン創造社公演のダンス」に見えたけど、
作中での意味を考えると(終わった後の顔も野村さんじゃなくて柴田だし)
あんなツラいオパンポンダンスは
いまだかつて無かったなぁ…と胸が痛みますね。

「変わろう」としてる人たちに対して柴田くんが見せた
嘲笑にも見えるし、
羨ましがる自分をふりきろうとするようにも見える表情が秀逸でした。
ラストシーンで「ほらね」という態度からの アレ。
心からの彼の笑顔と、
たぶん殴りかかってるんだろうな的な
暗転間際の動きが すごく光を感じたし、幸せな画でした。

「なんにもないってことは、
 なんでもありってこと」 (※ hide「ROCKET DIVE」歌詞)

「なんとかしようとするのを、
 世界は許してる」 (bpm『ESORA』作中のセリフ)

今までにもそういう言葉を
あちこちで聞いてきましたが、
それらの言葉が実感として心に染みてくる作品でした。

重さもつらさも突破口も、
生々しくリアルに体感できたのは役者さんの実力あってこそ。
カテコ後のアレも、 作中のアレと同じなのに明るく感じて。

すごく楽しかったです。
残り、月曜の2公演も 全力で生き抜いてほしいし、
できたら見届けたかったです。

アフタートークで
ドキドキしながら話聞いてる少年のような野村さん、
なんか見ててくすぐったくなりました(*´艸`)

-----

>末田@一瀬尚代さん

>チェン@伊藤駿九郎さん

>社長@殿村ゆたかさん

>柴田@野村有志さん

>ママ@美香本響さん

>宮崎@川添公二さん

-----
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(画像は7年前に描いたものです)