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今更『やぶれた虹のなおしかた』のこと。

なかなか書けないでいたけどこれはブログに書きたかった。
まいくろです。
先週末観たものも清書したいのがあるんですが、時系列優先で。

先月、ロデオ★座★ヘヴン主宰の澤口渉さんが
こゆび侍の公演に客演されるということで観に行ってきました。

こゆび侍の長編作品を観るのは初めてです。
短編は、ガチゲキで観てますね。
脚本・演出の成島さん、および「こゆび侍」の名前は
『青い童話と黒い音楽』の演出をされていたので知りました。


25年前に、お互いの心が入れ替わっちゃった男女の話。

スズキヒカリとして生まれた女の子と、
タナカヒカルとして生まれた男の子。
ある日、すれ違って「とんっ」と肩がぶつかって、
気づいたらお互いの心が入れ替わってました。
そんな二人が、
入れ替わる前に生きてきた年数をだいぶ超えたころの話。


↓ ネタバレ注意!





まず、話の切り口が面白いなぁって。
入れ替わっちゃったくだりのドタバタとか、
回想シーンでするのかなーとか思ってたら、
もうね、あっさりとほぼ語りのみ。
そのぶん「なにを試しても戻れなかった」という
諦めとか疲れとかを強く感じました。

身体はどんどん大人になるし、周りは信じてくれないし。
で、彼らはお互い身体にあわせた人生を送ることに。
「お互い、関わらない」と約束して。
この結論に至るまでに葛藤もあったんだろうなぁ。

作中の印象からして、
ヒカリとヒカルは入れ替わる前はほぼ面識なかった感じ。
よくある入れ替わりストーリーなら、
これをきっかけに仲良くなって最終的に結婚して…
とか、そんな流れになりそう。
しかし彼らはそれを望まなかったようです。
きっともう戻れないであろう自分の家族を、彼らはふりきった。

感心したのは、久しぶりに再会した時の二人の様子と会話の内容。
スズキヒカリがスズキ家の両親の葬式の話をするんです。
生みの親のお葬式。
連絡はもらったけど、タナカヒカルは行きませんでした。
「来ないでくれて正直助かった」というスズキヒカリの発言や、
「(連絡の電話で)タナカ家の人と話すのキツかったでしょ」
というタナカヒカルの発言。
そんな状況に出くわしたことなんかないけど
「現実的だな」って思わされました。

自分の身体の親だけど心の親ではなく、
でも向こうは親として接してくれてたわけで、
実の子じゃないけど子供としてお葬式を出して。

そのお葬式の事を、
亡くなった人の実子の心をもってる相手に知らせるため、
自分の実親に他人の立場で電話かけて。

どんな顔すればいいか分かんないし、
どうしてやればいいか分かんないし。
修羅場になるとかそういうんじゃなくて、
ホント、ただただ、どうすればいいか、わからない。
だから、彼らは関わらないという道を選択したんだろうな。


入れ替わったあとに直面する人生の諸々。
ずっと彼らについて回る「私は何者なのか」。
問いながらも、彼らは年をとって、生きています。

戸籍名「タナカヒカル」は友人のレンジョウと組んで
小さな会社を立ち上げ、
そこにはヒカルの恋人シノハラも一緒に働いています。

シノハラがヒカルの子供を妊娠した、と言い出すところで
「その子供はヒカルの遺伝子を持ってるけど、
 私(心はヒカリ)の子供なんだろうか…」と悩む事になります。


戸籍名「スズキヒカリ」の実家は喫茶店で、
その娘として親の死後も喫茶店を続けています。
夫の洋一郎と、娘の女子高生ハナとの3人家族。

子供を産んだことに関しての彼女の言葉で
「考えてる暇、意外と無かった」ってのがね。
そうなんだよなー! って思いました。

極端な話、父親って自分が産むわけじゃないから
たとえそっくりな子供が産まれたとしても
「自分がこの子の父親かどうか」悩んでられる時間がある。
母になるともう勝手に体の中で子供はどんどこ大きくなって
1年くらいで産まれちゃう。
「母親」という役割を
否が応でも実感して受け止めなくちゃならなくなるんですよね。
(偏見入ってるのは認めます)
…あ、そこで母性が生まれるかは別件。
スズキヒカリの身体に入ったタナカヒカルの心には、
母性的な感情が生まれてるようです。

あと、二人とも一般的な男と女の恋愛して
やることやってるのね、というのがちょっと不思議。
心は逆だから二人はゲイになるのかなって思ってたのです。
だけど、この二人は見てる感じ、実際にいわれないと
心は別の人と入れ替わってるんですって気づかない。
その身体で生きていこうって決めて開き直ってるからなのか、
男と女には、実はたいして差がないのか…


偶然ヒカリとヒカルが再会して、ハナちゃんのことについて
「(遺伝子のうえでは)僕の子だ」と
ヒカリ(女)の心をもったヒカル(男)が発言したのを
ハナちゃんの父親である洋一郎さんに聞かれてしまって、
スズキヒカリの家は大混乱。
お母さんが浮気してる! みたいな話になってしまいます。

正直に、自分の心が入れ替わったと説明してみるものの、
洋一郎さんは信じてくれない感じ。

彼、そういう話も受け止めてくれそうなふわっとした雰囲気で、
へたしたら女性的って言ってもいいほどなよっとしてて、
ちょいとサエないけどフトコロ広そうな感じだったのでね。
てっきり、すでに話して理解した上で
二人は結婚して子供作ったんだろうと思っていたのです。
そっか、知らなかったんだ…
この問題になる前に言ってたら、
もしかしたら少しは信じてくれたのかなぁ、なんて考えても
「たら・れば」の話。

その流れで、洋一郎さんの口から
じゃあなんで心が男なら僕と結婚したの? って発言がでる。
そのときの、ヒカリ(心はヒカル)の回答がね。

「あのときのスズキヒカリなら、そうするだろうと思った」

これは聞いた方はショックですよね…
選んだのは自分の意志じゃない、みたいに聞こえます。
まるで自分と結婚して子供作ったことが
「スズキヒカリの人生を演出するための通過儀礼」みたい。
ここで先に
「心はヒカルだけど、洋ちゃんが好きだし、
 この人となら結婚したいなって思った」
とか言ったら状況が変わったのかな…これも「たら・れば」。

それを聞いたときの洋一郎さんの表情がね。
もう「すっ」って感じ。
「冷める」とか「ひく」とかそういうのより、ずっとずっと空虚。
柔和で、笑顔を絶やさずに常に寄り添ってくれた洋一郎さん。
声を荒げてしまったのは、
きっと彼の人生で初めてだったのかもしれない。

洋一郎さんは、渉さんが演じていました。
今まで渉さんの演じてるところは何度か拝見してるし、
激高するところやほわっとした演技も観てるんですが、
「渉さんが演じている、だれかの感情」じゃなく
「洋一郎さんの感情」をダイレクトに受けた気持ちでした。

そういえば洋一郎さん、別の日だよってわからせる為なのか、
作中で服が替わったのですけど。
それでもチェックシャツで。そういう服が好きなのね…(笑
これってもしかして虹の7色を衣装に使ってたのかなぁ。
ビジュアルに関してはさほど意識せず観ていたので未確認。


ほかの役者さんもみんな演技が自然で、
表情や仕草で、こちらに言外の感情を伝えてきました。
そういう、こちらに「地の文」を感じさせてくれるお芝居、好き。

女の子(ヒカリ)の身体に入った男の子(ヒカル)役の
背乃じゅんさんが特に印象的でした。
おそらく、前に観たときの役が
全身から叫んでいたような賑やかな女性だったので
今回の、どこか冷めてるけど実は幸せをかみしめてる演技が
目をひいたのかなぁ、なんて。

あと、娘のハナちゃん役の池田光咲さんが
ぴっかぴかに磨かれた机を見て「きらきら~」って見せた表情と、
その際の照明の当てかたがすごく好きでした。
彼女と親友の関係を打ち明けた後の母への態度は、
どことなく中二病というか
「普通とは違う立ち位置にあこがれる私」みたいに見えたのは
私の偏見かなぁ…?

実はヒカリとヒカルが入れ替わっていたことを知りながら、
新しい生き方を受け入れようとする二人を見守り受け入れた
ワタナベさん役の小園茉奈さんのあたたかさとか
イケメンに向ける大人のお姉さん顔とか喋り方も好きだったなぁ。
「雨に、なーれっ」ってな、
現実的だけどちょっと奇跡を願ってしまう彼女が好きでした。

自分としてはめずらしく、
女優さんの演技に目をひかれた作品でしたねぇ。



ヒカリの人生もヒカルの人生も、説明しがたい状況だから、
つい言葉が足りなくて誤解されてしまう。
この話のすべてはそこからなんですね。
それで、うまく回ってたことがホロホロ崩れたり、ズレたり。
観てて、やりきれなく切ない気持ちになってしまいます。
というか、人生は長いし時間はたっぷりあるけど、
自分の思っていることすべてを伝えるには、
短すぎると思うんですよね。


家庭が崩壊してぼろぼろになったヒカリのもとに、
ヒカルがやってきて改めて戻ろうと試みるシーン。
ヒカリの縛っていた髪の毛がほどけて、
そしたらヒカルとヒカリがそっくりなんだなって気づいて。

つかみ合って転がり回る彼と彼女を観てたら、
「自分」ってどこにあるんだろう、
他の人と関わることで人格や人生が形成されるなら、
それは身体や体内に存在するものじゃなく
こうやって目の前にあるのかも…
などと、考えてしまったのでした。


台本、売ってて良かったです。
なんか、いろんな人の立場に立って何度も読み返したくて。

面白い! って一言では語り切れない作品でした。
もう一回反対側から観れたら、よかったなぁ。
イケメン君のとあるシーンの表情だけが、完全に予想できなかったのです。
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