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『四谷怪談』初演を経て再演で思ったこと

さて、全部は書けないけど少しでも吐き出しておきたい。

公式自ら「問題作」と称した
Office ENDLESS Produce Vol.17『四谷怪談』。

再演です。(初演は2012年7月)
5月9日の土曜、昼夜公演で両チーム観てきました。
舞台の四方を客席が囲むスタイル。それでWキャスト。
鬼だな…!



↓ ネタバレ記載有り。

初演は
「この舞台嫌い…」と言葉にしてしまった舞台でした。
(その当時の記事はこのあたり)

題材がね、すごく嫌いだったんです。
江戸パートと現代パートのうちの、現代パートのほう。
北九州監禁殺人事件のくだり。
実際に起きた事件で、
初演は2011年に最終判決が出たというタイミングでの
題材起用だったので…
私にとって、過去にするには新しすぎる話題でした。
舞台上で起きていること以上のモノを、
私はあの場所に観てしまい、ずっとムカムカしていました。

アンドレ特有の、
「初日が終わるまであらすじがハッキリしない」点も
この時ばかりはマイナスになってしまって。
お岩さんを観るつもりで行ったのに、
まさかの監禁・通電、マインドコントロール、
家族同士での殺し合い描写を見せられるとは…。
役者さんたちの演技も生々しくて、
「心を閉じて観る」を、まいくろは初めて行いました。

私にあの事件の知識がなくて、
「西田さんが作ったオリジナルの事件」だと思って観てたら、
初演もここまで嫌いにならなかったのかも…と時々思います。


で、再演するって聞いてチケットとりました。

なんでかっていうと、
近年の本命くん(=竹内諒太くん)が演じた人間の中で
この『四谷怪談』の役が一番印象的だったから。
「イイ演技する本命くんが観たい」を優先したからです。

現代パートで出てくる本命くんは「入江(仮)」という男。
主犯の「容疑者(@西田さん)」の会社の社員。
「田宮(仮)(@平野くん)」とコンビで、
二人で容疑者の舎弟みたいな感じです。

監禁が始まって、只野さんや萩原家の人々が犠牲になっていく中、
田宮は心が折れそうになっていくのに、
入江は平然としている感じでね。怖いんです。
コンビ状態だったのに、終盤は田宮と目も合わせず、
彼を見て「おびえてやんのw」とでも言いそうな顔をしている。

「集団の中で最下位認定=人間以下の扱い」っていう
容疑者がつくったルールの中で、
「自分は大丈夫だ」という確固たる自信が見えます。
だいたいいつも上から2、3番目をキープしているよう。
妹夫婦がやってくるシーンの酒盛りでも、
ちゃんとイスに座ってる(人間扱い…?)し。

入江はたぶん本能的に生き方上手なんだろうなぁ。
適応能力が高い、というか。
取り入る訳じゃないけど、
イジられても憎まれない、深くつっこまれない、
弱みは攻め込まれない程度に計算して相手に見せ、
相手を安心させて信用を得る、みたいな。

田宮が逃亡したとき、
珍しく狼狽している様子が印象的でした。
人数が少なくなることで、
自分が最下位になる可能性が増すって感じ。
(警察にタレ込まれるかもーってこともあるんだけど)
そういえば、
容疑者が高級布団の販売(詐欺的なヤツ)会社をしていたとき、
逃亡をはかった営業社員を連れ戻すのは彼の役目でしたね。
その手腕において役に立つ、信用されてるんですね。

再演で追加になったセリフで、
「(解体道具を)渡してやれ」と言われて
道具を取りに行く入江に、容疑者が声をかけるんですね。
「逃げるなよ。追いつめるぞ」って。
そのときの入江がどんな顔してるのか見えたのは、
Aエリアの下手側に座った人たちだけですかねぇ。
あの言葉のあと、ほどなくして入江もあの空間から姿を消します。
まいくろの最後の記憶は、家族たちを遠くから見つめてる姿。

なんだろうな…
彼からは必死に「逃げよう」って感じがしなくて、
でもここが快適だとは思ってない様子で。
逃げる機会をうかがってるというよりも、
現状にがっかりしたから去った、みたいな消え方で。

再演で私は『四谷怪談』作品内の容疑者について
「一人だと、この人弱いんじゃないかな」と思ったのです。
「自分のことを守れるのは自分だけ」という彼の言葉を聞いたとき、
「(いわゆる)正常な人間関係が構築できず、
 弱者・強者で支配することしかできないのかな、
 他人を敵としか思えないのかな…」という印象を受けたから。
初演ではそんなこと思わなかったのに。
なにが変わったんだろう。
西田さんの演技に変化があったのでしょうか。
それとも、私の立ち位置なのかなぁ。「慣れ」たのかなぁ。

そういう意味で、容疑者+田宮では
ここまで長続きしなかったんじゃないかな、と。
再演だと、入江が一番怖いです。
あの場を去った後、
普通にまた社会生活送ってそうなところも含めて。



江戸パートでは「直助」というキャラクター。
「へいっ」「ぺいっ!」ってお返事をしつつ、
洋二郎さん演じる伊右衛門の部下というか、パートナー的な。
直助がごろつきに金を渡して悪さをさせ、
伊右衛門がそいつらを斬って手柄をたてて、
そこで回収したお金がまた直助に戻る…という
ちょっとしたマネーロンダリング(←?)。

伊右衛門は直助を下に見てるようだけど、
直助はへつらいつつたまにドキッとするような発言を投げたり。
「俺に言うのは恥ずかしいですか」とか、
こっちも「心の底をさらしてるようで、読ませない」みたいな。

彼の言葉で初演から好きなのがあって、
伊右衛門が人を斬り殺した後の死体の山を見て
「ここにも、人生あるのにねぇ」って。
初演はさらっと言ってたのですが、
今回はもっと溜める感じになって、
「ここにも人生…あるのにねぇ」って言い方に。
さらに途中で、こちらを指さしながらゆっくりと一回転。
 チャンバラかっこいいって思ってないかい?
 現代パートの死にばかり、重きを置いてないかい?
 ここでも人、死んでるんですぜ、アンタ。
そんな声が聞こえてくるような目でした。

このシーンに限らず、今回の再演バージョンは
「こちらが目撃しているだけ」ではなく
「現場からもこちらを見られている」感覚が強かったです。

個人的に、堀部の旦那が来るまで
死体の山のそばにいられたっていう直助の神経が…こわっ。
入江とか直助とかじゃなく本命くんとしては
イメージシーンで
ルービックキューブを鼻歌でも歌うようにいじってたり
蛍のシーンでほんのり優しげな顔だったりで、あたたかみ補完。
(ここって結構みんな優しい顔だった気がする)

直助の裏切りシーンで、
斬ったときに一瞬「とめ」が入るようになってたり、
「男は、鎖につなぎました」のシーンでも
ピタッと止まって景色を見せるようにしてたり、
少女Aの扉が開いた瞬間の歓声などから、
「舞台作品」要素が強まってたなぁと思いました。
糸を触れさせて一学への返り血にした表現とかも、好きでした。



少し離れた気持ちで見てるとですね、
現代でも江戸パートでも、
登場人物が必死に空気を読もうとしているところが、
とても、キモチワルかったです。
日常の風景なんだけど、なぜか、すごくキモチワルい。

どうすれば一番波風たたないか、
どうすれば「いい人」でいられるか
どうすれば自分の身を守れるか。
「夫婦ですから」「家族ですから」が
途中からいいわけに聞こえてきましたね。
好きだから夫婦になったじゃなくて、
夫婦だから好いてるんです…みたいな感覚。

「りく(@三枝さん)」と「くう(@武田さん)」の
やりとりも怖かったなぁ。
とくに、くうが、母が傷つかないように、
「父上とあの人はそんなに仲良くなかったよ」ってあたり。
りくには、その思いやりが、
逆に「あわれんでる」に感じられた一瞬だったんじゃないかしら。
幸せ全開に無邪気に報告されるのもたぶんイヤだし、
こうやってこちらの顔色を見て模範解答いわれるのもイヤ。
りくとしては、くうを岩に会わせた時点で
どっちに転んでも不快な思いになったんだと思うなぁ…

貧血になった娘(日替わりネタ)を即座にいたわる愛もあるから、
100パーセント憎んでるわけじゃないのね。
でもあの子に明確な罪を与えたかったというか、
その罪自体が罰っていうか…
うん、言ってて自分でもよくわからなくなってきました。

江戸パートでは総じて
「罰されないで、ほほえまれる事が一番苦しい」と思いました。



現代パートは、瑠璃子(@白谷さん)の
愛、執着、嫉妬心がミソだなって思いました。
田宮に逃げましょうって言われたとき、
呪縛から解けそうになったんだけど
田宮の何気ない「きっと新しい女ができたんだ」発言を聞いた後
ふっ、と彼女の空気が変わるんです。それが印象的。

初演再演ともに、それこそ幸薄そうな、
でもそこが男心をくすぐる色気を出す女優さんだったので、
実はこの『四谷怪談』の中ではわりと好きな役です。
(その立場には絶対なりたくないけど)

岩と2役にならないんだなぁ…と思ってたんですが、
たしか作中で瑠璃子が
岩の着物を着せるか脱がすかの役目になることがあるんです。
着物を持って、暗がりで立っているその姿に
後半の、椿に向けた彼女の
「そこでは生きたかった人生を…」が、かぶさるのかな。
りくの娘が「るり」なのも意味深。

あと、瑠璃子の妹夫婦の悲劇ね。
旦那さんの「隆」は桜田さん、一内くんの順で観劇。
妻と義兄との関係を疑う種は、飲み会ですでに蒔かれてました。
その疑念を認めず、みないふりをしようとした桜田さん、
理性で押しとどめようとしていた一内くん、という印象。

狂ってしまった妻を抱きしめたとき、
「たかしちゃん」という名前が妻の口から出るまでの間の
一内くんの顔…
自分の名前がでてくるか、義兄の名前なのか。
うそをつく余裕がない中で、
彼女の気持ちがどこにあるのかを暴くような顔に見えました。
「木枯らしに抱かれて」の中で「野生の風」を歌う姿は
やはり壮絶です。
歩き回る際に両者で動き大きく違うのも、
各々の役作りの違いなんだろうなぁ。

萩原の家の面々。
しずかさん(母:良子さん)が訛りが強くなったようで、
容疑者客席からの参上! シーン、
やっぱりあそこは柵端と容疑者の会話だったんだ。
(初演だと
 しずかさんの嫉妬心をあおるシーンにも見えたのです)
家族できめてって言われたときだったかな。
みんなで隆を見つめてて、決断を責任を投げてる感じがして。
そして「あととりですから」と呪文で自分を縛る隆。
容疑者がひっかき回したからあんな悲劇になったけど、
実際普通の生活してても
隆は少々ストレスのたまる日々になったかもしれない…
なんて思いました。

お父さんは佐久間さんが。
椿の「ここから私が父親として…」ってセリフ、
なぜか初演で客席から笑いが起きたので妙に心に残ってたのですが
今回はセリフ自体ありませんでした。無くても違和感ないし。


隆ちゃんの妻で瑠璃子の妹、理恵(@田代さん)。
通電で耳が聞こえなくなって、
それでも「母」で「妻」だったのがいじらしい。
過去は隠してたけど、
心は隆ちゃんを裏切ってなかったのにって切なくなります。
そうそう、
ここでキューブを床にたたきつける容疑者はなんなんでしょうね。
耳が聞こえないから触覚(振動)を刺激した行為かなぁ。
あと、敗北感からくる苛立ちと、私は判断してしまいました。
彼女の中の絆を解体しきれなかった…みたいな。

「切ない片思い、あなたは気づかない」が
二人の心がすれ違っていく様子、
そして瑠璃子の容疑者への思いとどこか重なるようでした。
絞められた理恵の目が、かっと開くところが印象的です。
彼女は、初演よりも今回の方が生々しかった気がするなぁ…



監禁から逃れた少女Aを解放しようとする
椿(@佐久間さん)と柵端(@良子さん)。
「かわいそうな被害者」の皮を無意識にかぶっている彼女を
自分の罪と向き合わせ、
それを本当に償わせることで少女を前に進ませようとしている。
アプローチが両者でだいぶ違って、
極論、性善説と性悪説みたいだなーって。
闇から柵端が扉を開けて、
その先の光さす扉のもとに椿がいて少女を待ってるのが、
象徴的だなあって思いました。

今回私が目をそらしたのは、
初演の時の「作中で明示された扉」ではなく、
「笑いのシーンでほぼほぼ笑えず、
 でも空気を読んで笑ったふりをしてた自分自身」。

ここ数年、西田作品の笑いシーンが笑えなくなったのは、
私の心境の変化が強いのかも。
そういうのは個人の好みなので
別に無理矢理笑うこともないし、
作風変えて、って願うつもりもないのですが。

なんか「笑わなきゃいけない」って思っちゃって、
笑い顔を「つくった」自分が少し嫌いになりました(笑


今回は少し距離を置いて観れたかなぁと思ってたけど
やっぱりどこかで絶対、直にえぐられますね、西田さんの作品。
そういうところは嫌いじゃないし、だから観続けてる。



全部書きれた気はしないけど、
こんな事を思いながら観てました。
3年越しでやっと消化できた気持ち。

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