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『あ・ら・かると岸田國士』雑感

土日でハシゴ中。まいくろです。

土曜日は、まず千代田線を終点まで。
代々木上原駅の東口から、
坂道をよいしょよいしょと上って右折したところにある
住宅街の中のスタジオ「Ito・M・Studio」。

応援中の女優さん、安藤繭子さんご出演
『あ・ら・かると岸田國士』を観てきました。

ANDENDLESSの作品によく客演されている塚本千代さんや、
繭子さんと同じWSに通っていていて、
彼女とよく共演している山田隆史さんも出演。


岸田國士(きしだ・くにお)氏の作品に触れるのは、
実は初めてではなかったりします。
以前、朗読公演を観てますね。
その時は全くの無知識で行きましたが、
今回は作品にちょっと目を通していきました。

今回上演されたのは
『軌道』『雅俗貧困譜』『是名優哉』の3作。
大正の終わりから昭和の初めにかけて発表された作品。
この3つを、分割して入れ子にして上演するという形。

作品の設定を一つの景色にまとめて
同時に見せるのかと思っていたのですが、
どちらかというと積み重ねるような感じでした。
作品のだいたいの流れを知ってるから、
(当日パンフレットにも書いてありますけどね)
役者さんの演技に集中して観れました。



↓ ネタバレ注意!




うまいなぁと思ったのが、『軌道』の酔漢の存在。
最初の彼を『雅俗貧困譜』の小僧にしておいて、
でも終わりにもう一度上演される
『軌道(別バージョン)』では小僧でなかったことで、
終重なったものに一本の軸が通っていたように見えました。

『軌道』は、
駅のホームで起きた数十秒の、男と女の初めての出会いの話。

『是名優哉』は、舞台上で役者が自我を叫ぶ話。

『雅俗貧困譜』は、書店主の、とある年の大晦日の話。


今回、原作にはいない『ホームレス』という存在が、
現代と呼ばれている「大正・昭和』と、
客席の存在する「現代』を繋いでくれます。

彼女の存在と、この公演を通じて思ったのは、
現代はいつだって、
そこに生きる人にとって現代なのだ、ということ。
そして、人間の人間らしさ、喜怒哀楽は、
時代によって左右されないということ。

ホームレスが登場するのは、
始めと終わりに配置された『軌道』。
ホームレスがナレーションのように、
あるいはうわごとのように読みあげていく景色に
ほぼ同時…でも、一瞬遅れるタイミングで、
男と女が景色を作っていきます。
そのタイミングが、見事に客席の視線を誘導しています。

「女」役の塚本千代さんが、
静と動とをうまく使い分けていて、
20代の女性(役)の可愛らしさ、燃え上がった熱さ、
そしてその熱さを衆目環境で一瞬露わにした後の、
淑女らしい恥じらいを抱えつつ毅然としようとする姿とか、
細かく表現していたなぁ。

「男」役の方は、
大げさに言うとコミカルな雰囲気をまとっていて、
そこが「女」役の抱えているであろうシリアスな事情
(作中では詳しく述べられないけど、たぶんそう)
といい対比になっていました。



この二人の組み合わせは『是名優哉』でも。
同じ人物ではないようです。
「夫の長期出張を見送った後の奥さまと、
 その夫の友人である男性との会話」を上演中の、
役者男女二人という状況。

これはね、文章で読んだときも面白かった作品。
演じている男の役者が、突然自己主張を始めるんですね。
「俺はこういう役はイヤだ!」って。
彼を演技に引き戻そうとする女優さん@千代さんの、
客席に愛想を振りまきつつも、
共演者をとがめるワタワタが心をくすぐります。
そして、あのオチ。まさにこれ、名優なり。
この間も別作品の感想で似たようなこと書いたけど、
悲劇と喜劇は同じ景色の別角度なんだなぁ。

「演じているのをやめた役者」を演じている、という
透明の風船の中に色付きの風船が入っているような景色が
客席から観ていてとても楽しいです。



『雅俗貧困譜』は、年の暮れ、
ほうぼうへの支払いを済ませたいけど
こちらも回収しきれてないので手元にお金がない書店の主人と、
彼からお金を回収しないと自分たちの商売が滞る商売人達と、
友達である書店主にお金を借りにきた作家と、
利子を回収にきた書店のパトロンとが織りなす
お金のつながりの中にある、人情の景色。

書店主の妻が奥の部屋で見ていた夢。
無意識に周りの音を取り込んでいたのでしょうねぇ。
現実にあった風景をコミカライズしたような夢は、
お金に必死になっているのがバカバカしくなるような展開。
それを聞いた、男ふたりの表情がなんとも面白い。

繭子さんは、ここで作家の奥さんを演じていました。
旦那さん役の方とは、かなり年の差がありそうなのですが、
観てる内に違和感のない夫婦に。
むしろ彼女の方が後ろで手綱をひいてるような雰囲気さえ(笑

外が寒かったのよ、ほら…って、
旦那さんに自分の手を触らせるんですけど、このあとの
作家氏の対応含めて可愛すぎる(*´∀`)ラブラブ!
座布団を旦那の隣に持って行って、
えへって感じに座るのも(*´∀`)ラブラブ!


山田さんは『軌道』の駅夫と『雅俗貧困譜』の製本屋。
駅夫は初っぱなから出てきたので
「あっ山田さんだ!」とウキッとします。
男が渡した切符を受け取った後の、
一瞬感情を浮かべた後に
いつもの日常に戻っていく感じが好きでした。

製本屋は着物姿で、
なんといっても白髪まじりの姿になってたのがね。
おでこ出してて白髪交じりの渋い男の人ってそれだけで
なんかズキューンと来る(笑
終盤、大集合状態になってるときの
まじめだけどとぼけた雰囲気が楽しくて、

そのあとの締めくくりの『軌道』の笑みが、
作中では基本表情を変えない役だったので
なんともまぶしかったですねぇ。



そう、全ての締めくくりに、
もう一度『軌道』をやるのです。

登場していた男性がみんな「男」になって、
女性がみんな「女」になっていく景色をみて、
これは『軌道』というより岸田國士の作品すべてを
ここに凝縮しているんだろうなって思いました
ある男と女の話じゃなくて、
この世全ての男女の縮図かもしれないなぁ。



繭子さんを追いかけてると、
クラシックな方面での
「私の知らない世界」をどんどん紹介してくれるので、
とても楽しいです。
無理に現在の設定にアレンジせずとも、
ちゃんと描いて演じていれば感情移入できるものです。
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